ライフハック レビュー

【iPhone12pro maxを1年間使った感想】iPhoneが発掘現場用スマホに最適な理由【記録作業のスーパーサブ】

 「iPhoneにLiDARスキャナがつくらしい。」実際iPadProにLiDARセンサがついた時から「これは現場で使える!!」と確信していた私が、スマホの買い替えを機にiPhoneLiDARに手を出してから一年がたった。実際一年間使い倒した感想と、現場スマホとしてiPhoneはめちゃめちゃ使えますよ、ということを解説する。遺跡の現場に出る皆の者、とりあえずProのつくiPhoneを買うのじゃ。

 写真は私が普段使いしているiPhone12ProMax。かなりヘビーデューティーな使い方をしているため、ケースはボロボロ。

 ちなみに職場で導入するのは面倒くさいので、現状私物を勝手に持ち込んで使っている。

【結論】現場では12以降のiPhone Pro系列が最強

iPhone12Pro以降のiPhonePro系列が最強

 結論として、現場で最強なスマホはiPhone12Pro以降のiPhonePro系列、ということになりそうだ。現在はiPhone12ProMaxを愛用している。スマホはどちらかと言えばAndroid派なのだが、現場で使う分にはやはりiPhoneということになった。それも、LiDARを搭載しているiPhoneProの系列に限った話になる。

 LiDARの搭載で、iPhoneは手に収まる計測機器としての役割もこなせるようになった。

発掘現場の記録に必要な機能全部盛り

 遺跡発掘の大雑把な流れとして、

  1. 調査区、トレンチの設定
  2. 表土はぎ
  3. 遺構精査
  4. 検出写真・図面作成
  5. 遺構掘削
  6. セクション写真撮影、土層断面図作成
  7. ベルト崩し
  8. 平面図作成、レベリング

という工程がある。iPhone12ProMaxは、以上の赤字で示した工程で主に活躍している。しかも、1台でほぼほぼ全部の役割をこなせてしまうという、ほかの機材にない特色がある。

 また、黒字で示した工程は実際に掘る作業が大半である。さすがにスマホで土を掘る人はいないだろう。

写真、図面、作業状況の記録、すべてをこなせるスーパーサブ

 現実問題として、私が使っているiPhone12ProMaxは

  • 写真撮影
  • 3Dモデルの作成
  • 作業状況の記録

をこなせてしまう、まさにユーティリティプレイヤーである。

 写真は標準のカメラアプリでも十分にきれいに撮れるし、同じく標準のカメラアプリでビデオをとれば作業記録になる。

 さらにiPhone12ProMaxはLiDARを備えることで、なんと3Dモデルの作成が簡単にできる。ついに図面作製にも対応してしまった。

 もちろん写真は一眼レフにはかなわなかったり、3Dモデルも計測方法に伴う精度の問題があったりと、なにかと使いどころを選ぶ場面はある。しかしながら、いざという時にあると心強いスーパーサブ的な運用に落ち着いている。さながら、元広島・巨人の木村拓也選手のようだ。

iPhoneはスマホを超えたスマホ

 つまり、私たちは今や「電話であり、パソコンであり、カメラであり、計測機器である」夢のデバイスを手に持っているわけだ。

 そもそも3Dスキャナを買おうとするとえらい金額がかかる。LiDARセンサなら数万円で買うこともできるが、使いこなすにはある程度の知識・ノウハウが必要だ。

 スマホはもはやただの携帯電話ではないが、iPhone12Pro(Max)はもはやただのスマホではない。iPhoneはある種「スマホを超えたスマホ」である。

発掘調査の現場にはiPhone(Pro)が最適な理由

iPhoneはカメラが素晴らしい

HDR補正とかなり正確な色再現

 iPhoneのHDRがかなり優秀である。発掘調査の現場では狭くて深いところや、一部に影が入ってコントラストがキツい場面などがしょっちゅうあると思うが、iPhoneのHDRは黒つぶれさせずにかろうじて色を拾ってくれる。特に深いピット(柱穴などの穴)、陥穴(おとしあな)の撮影時にも何とか底面まで映してくれることがあり、重宝している。土層断面の写真も見やすい。

 色再現の味付けも絶妙だと感じている。TrueToneはたまに調子が悪いこともあるが、基本的に見たままに近い色を表示してくれている。

センサーシフト式手振れ補正が優秀

 iPhone12世代はProMaxのみ、iPhone13世代はすべてのiPhoneに、広角カメラにセンサーシフト式の手振れ補正が搭載されている。主に威力を発揮するのは動画撮影時だと思われるが、写真撮影時にも地味に威力を発揮している。

 不安定な場所や短時間で急いで撮影することが多いが、センサーシフト式手振れ補正のおかげで一発で決まることが多い。かなり優秀だと感じている。

いざというときにはRAWでも撮れる

 あまり使わないが、RAWで撮ろうと思えばRAWでも撮れる(Apple Pro RAW)。選択肢があるのはうれしいところ。

iPhone(Pro)にはLiDARがある

 これが最大の理由である。iPhoneはLiDARを積んだことでほかのスマホとは一線を画す存在になった。カメラがいいスマホはほかにもあるが、LiDARは現状(現行では)iPhoneにしかない。

 iPhoneのLiDARを現場で使うことのメリットとしては、

  • 従来の数分の1~数十分の1の時間で図面作成が可能(線図のトレス元として使う)
  • 崩落の危険がある遺構の内部、深い遺構の形状をとることができる(地下式坑、井戸など)
  • とりあえず現状の形を抑える「メモ3Dモデル」的な運用ができる
  • 調査区全域の3Dモデルを作成し、上空から俯瞰するような見方ができる
  • アプリによっては動画出力が極めて容易

などが挙げられる。粗いデータではあるが短時間でデータ取得が可能であるし、テクスチャが乗ればトレス元くらいには使える。

数か月前ほどからフォトグラメトリとLiDARの合わせ技を使うアプリが出てきて、精密度の問題もクリアしつつある。

iPhoneはシンプルにスペックが高い

 日本だとiPhoneの普及率がやたら高いので忘れがちだが、iPhoneは紛れもなくハイエンドスマホである。iPhone13世代でも、最低価格はiPhone13miniの128GBモデルでお値段86,800円と、この時点で中華スマホの雄Xiaomiのフラッグシップが買えてしまうレベルだ。

 しかしそこはiPhone、高いのは値段だけではない。もちろん性能も最高水準であるし、使用感も極めて高い水準である。むしろこれだけのスペックがあるからこそ、LiDARを使ったスキャンの処理ができるのだ。

 もちろんこのスペックの高さはスキャン以外の動作にも影響する。普通のカメラにも、それ以外の普段使いにも。

iPhoneは防水・防塵

 iPhoneは防水、というのはここ最近(実際はiPhone7(IP67)~)浸透してきているが、iPnone12ProMaxのIPコードは「IP68」となっている。

IPの後の「6」が防塵等級、6の後の「8」が防水等級を表していて,

  • 防塵等級6は「粉塵の侵入がないこと」(6段階中6)
  • 防水等級8は「継続的に水中に沈めた場合でも影響を受けない」(8段階中8。公式HPでは深さ6mまで、最長30分間)

という意味らしい。要するに今発売されているiPhoneは防水防塵であるということ。もちろん落とすなど使用条件によって耐性が低下することがあると公式も呼びかけているので、絶対ではない。

iPhoneは頑丈

 これは使用感の話になるが、iPhoneはかなり頑丈である。以前iPhone7を使っていたが、12ProMaxはそれより一段と頑丈な気がする。ケースはRhinoSheldを使用しているが、それも相まって鉄壁さを感じる。

 実際、現場でも家でもかなりラフな使い方をしているが、一年耐えきっている。そしてなお、壊れる気配はない。

 現場で発掘の作業をしていると、ふとした時にスマホが胸ポケットから落ちてしまうことがよくある。前かがみになりながらの作業が多いのだ。しかしながらiPhone12ProMaxはぴんぴんしているし、カメラレンズにも傷ひとつない。

 無論落とさないことが一番であるし、私の運がいいだけという可能性もある。しかし、何回もヒヤリとしたが、それでもiPhoneは無事だった。ケースがいいのか?いつぞやの割れやすいイメージが嘘のように、まるで任天堂のゲーム機をも彷彿とさせる頑丈さを誇っている。

iPhone現場活用例

現場でLiDARスキャンによる3Dデータ作成(使用アプリ:Scaniverse、MetaScanなど)

 12以降のiPhoneProはLiDARスキャナを搭載している。AppleのiPhone13Pro/ProMaxのページでは特に夜間でのポートレート撮影でLiDARが使われていることが述べられていて、現段階では大々的に3Dスキャンができることは述べられていない。しかし世の中には頭のいい人がいるもので、いくつかのiPhoneLiDARを用いたスキャンアプリが登場している。

 中でもよく使うのはScaniverseやMetascanといったアプリが多い。

 ScaniverseはLiDARスキャン特化で、テクスチャがきれいなLiDARスキャンができる。処理が比較的早い。PokemonGoでおなじみNianticに買収されて利用料が無料になった。神か。現場での短時間の記録に使うことが多い。

 Metascan(旧Forge)はLiDARを用いたスキャンはもちろん、 フォトモード ではLiDARとフォトグラメトリの合わせ技のようなことができる。LiDARの粗さをフォトグラメトリで補うようなイメージであっているだろうか。ある程度きれいなモデルを、ある程度スケールを担保して作成できる。

 博物館の土器をMetascanで撮った作例は下記。筆者作成。フォトモードで作成していて、撮影枚数は80枚くらいのはず。見た目は十分。

現場でフォトグラメトリによる3Dデータ作成(使用アプリ:Trnioなど)

 iPhoneにはフォトグラメトリができるアプリが存在する。代表的なところだとtrnioだ。アプリ内で写真を撮影するか、カメラロールから写真をアップロードして3Dモデルを作ることができる。

80枚までの枚数制限があるが、例えば一通りフォトグラメトリ用の写真をiPhoneで作成し、Trnioで3Dデータになるかテスト、という使い方もできる。買い切り600円と、機能を考えたら衝撃的な安さ。

記録漏れを防ぐサブのカメラとして(使用アプリ:標準のカメラor Photoshop Camera)

 前述したとおりiPhoneのカメラはかなり優秀である。ディテールは一眼レフにはかなわないが、パッととった絵作りはかなりのクオリティだ。超広角カメラが使えることも利点である。

 また、スマホなので常にポケットに入っている。カメラを取りに行くほどではないが、とりあえず写真を撮っておこう、というタイミングでの撮影も多い。意外と後々使える写真だったりする。

いざという時のメジャー・水平器代わりに(使用アプリ:標準の「計測」、LiDARMeasuring)

 メジャーを忘れた!などの突発的なアクシデントにもある程度対応できてしまう、そう、iPhoneならね。標準アプリの計測で平面の点間距離を測ることができるし、簡易的な水平器としても使える。

 LiDAR Measuringは、LiDARを利用した距離測定を行うことができる。スマホから対象物の大体の距離を測ることができる。

作業映像の作成(使用アプリ:標準のカメラ)

 iPhoneの動画性能はスマホの中でもトップクラスであることはよく知られている。正直作業記録の撮影だけであればオーバースペックであるくらいである。最近では作業手順やベテランさんの動きを動画で記録する試みを始めていることから

現場の疑問点を写真とともに質問(使用アプリ:Lineなど)

 これはすべてのスマホでできることだが、わからない部分(遺構・遺物など)をスマホで写真に撮り、ラインで転送、即座に質問することができる。調査時の所見が鮮明なタイミングで質問した方が状況がぼやけずに伝わるので、個人的によく使う。その後の決断を早くすることにもつながる。いつも質問に答えてくれる先輩には頭が上がらない。

iPhone12ProMaxの不満点

夏場はしょっちゅう熱にやられる

 特に3Dモデルを作るときやビデオ撮影時にありがちだが、夏場は熱にやられて処理が遅くなったり、最悪アプリが落ちたりする。しかし金属製のボディであるiPhoneにこれ以上の冷却性能を求めるとなると、もはやファンを付けるなどするしかない。プラスチックのボディだったらさらに熱がこもっていたことだろう。

 夏場は熱対策をできる限りしたほうがよさそうだ。私は現場で使っていた時、LiDARでの計測が終わった後処理の段階で、保冷材の入ったクーラーボックスにiPhoneをそのまま突っ込んで冷却していた。

Windowsとの連携の悪さ

 一言、Apple製品であるから仕方がない。といえばそうなのだが、写真を移すにもひと手間が面倒であるし、同期も取りづらい。現状はOnedriveなどクラウドストレージを利用して各種データを移動しているが、特に現場写真は枚数が極端に多いのも面倒さに拍車をかけている。

 解決策は周りもApple製品にすることだが、コストがかかりすぎる。ノートパソコン買い替え時に検討する。iPadも欲しいので環境をいじりだしたらきりがない気がする。

iPhone12ProMaxはデカすぎて胸ポケットからしょっちゅう落ちる

 これはもう個人で何とかするしかない問題である。しかしよく落ちる。利便性からつい胸ポケットに入れてしまうのが悪いのだが。

 逆にデカくて重いので、その存在感から忘れたり落としたりするとすぐに気づくのはメリット……なのだろうか。

今買うならiPhone13Proがおススメ

iPhone全機種の広角カメラに光学式(センサーシフト式)手振れ補正がついた

 iPhone13世代になってから、すべてのiPhoneにセンサーシフト式の手振れ補正が追加された。iPhone12世代にはProMaxにしかなかった機能である。私は写真や動画をよく撮影するため、この機能が欲しかった。そのためiPhone12ProMaxを選んだくらいである。

 iPhone12発売当時、実際に売り場でスマホを故意に揺らしながら映像を撮影してみたが、センサーシフト式手振れ補正の有無は一目瞭然だったと記憶している。幸い今世代はすべてのモデルに搭載されているので、iPhone12Pro、ProMaxどちらも選択肢に入ってくる。

ハンドリングのしやすさはiPhone13pro、ProMaxはデカくて重い

 iPhone12ProMaxを使っていて最も感じるのは、「デカいな」、ということである。もちろん大きいスマホにはそれなりのメリットがあるのだが、もう少し小さくてもいいかな、というのが正直なところだ。

 幸い今までLiDARスキャン中にスマホを落としたことはないが、もう少し小さかったらハンドリングが楽そうではある。

電力効率の向上で電池持ちが改善

 ProとProMaxを比較すると、当然図体がデカい方が大きい電池を積めるため、ProMaxの方が電池持ちがよい。しかしながら、iPhoneは12から13になるときに電力効率が向上し、電池の持ちもよくなっているようだ。実際使っていないので何とも言い難いが、電池持ちに関してはProでも十分ではないかと思う。

ProMaxの優位性がiPhone12時代より薄い

 以上の理由から、正直iPhone13ProとProMaxはどっちを選んでも大差ないんじゃないかと考えている。12の頃はカメラ部分で手振れ補正やセンサーサイズの違いがあったが、今回はそれがない。しいて言うならiPhone13Proの方が1万2000円安いくらいだ。少しお金を出して大画面を買うかどうかの選択になるが、そこはもう好みの範疇だろう。

 個人的にはiPhone13Proをおススメしておく。しかし我ながらニッチすぎる記事だ。いいiPhone発掘ライフを!

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